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2010.09.13

コツを掴めば英語でも日本語でも(reflect on 高校論題:8)

 「今の判定について解説してくださるのですか?」という、引率された先生の言葉が印象的でした。

 前回も書きましたが、東北予選の翌日、朝2番の新幹線で関東予選の見学に行きました。前回の啓明高校さんも、一生懸命に考え抜いた上にディベートをされていて、残念ながら負けてしまったことを感じ取り、フォローに伺ったのですが、次に見学した試合で負けてしまった宇都宮女子高校さんのところにも、別な理由があって「行かねば」と思ったのです。

 僕の中には3つも理由がありました。

  1. 確か第一反駁の生徒さんだったと思うのですが、スピーチ中の主張の前で、言葉に詰まるのです。それは出だしの短い発音で「あ、今、英語で話そうとしたのを飲み込んで、その英語の意味と同じ意味の日本語を探して言い直した」というのを察しました。
     そうそう、確か宇都宮女子高校さんは、『全国高校生英語ディベート大会』に出場していて、ベネッセチャンネルの『高校生が英語でディベート』にも出たことがあった、と思い出しました。
     
  2. その第一反駁さんは、否定側の第一反駁へ再反駁を丁寧に行なっていたのですが、否定側立論への反駁が僅かしかありませんでした。
     これも、英語ディベートの影響か?と思いました。
     ご存じない方もいるのかもしれませんが、英語ディベートのフォーマットにおける反駁は「Attack」と「Defence」とに分かれています。アタックは反駁、ディフェンスは再反駁です。僕の推測でしかないのですが、彼女は「Defence」担当で、ディベート甲子園フォーマットの肯定側第一反駁では、「Attack」と「Defence」の両方を4分の制限時間内でこなす必要があることに、あまり慣れていなかったのではないかと思ったのです。
     
  3. 第二反駁さんが、ある種“会心”の、“別な試合であったなら”適切だった議論のまとめをしたのですが、それはジャッジが採ってくれませんでした(0-3の敗北)
     そのことについては、主審が講評・判定の中で、間違いなく適切に述べて下さっていました
     しかしながら、ディベートに慣れていない方々は、その適切な講評・判定を聞いても、中々理解に至らないのです!(←仕方がないことだと思っています)。
     ですから、このままでは「なぜ負けたのか」に気づけずに、(日本語)ディベートに対する悪いイメージを抱いたまま、会場を去ることになることが懸念されたのです。

 前回同様、関東甲信越支部の関係者ではありませんが、NADE東北副支部長であることを明かして、「もしかしたらどうして負けたのかがよくわからずに、このままだとディベートが嫌いになっちゃうかもと思いまして…」と語りかけたのでした。
 その時の顧問の先生の言葉を最初に書きました。「あぁ、話しかけて良かった!」と、本当に思いました\(^^)/

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 啓明学園の皆さんと同じく、宇都宮女子高校の皆さんも、論題に対して一生懸命に考えて、また、ディベートについてもよく学んで試合に望んていることが感じられました。
 しかしながら啓明学園さんと同じく、ディベート甲子園ルールのディベートに慣れていなかったのかもしれません。
 フローを書いていなかったり、また議論に用いられた文言に注意深くなければ、肯定側の勝利と思ってもおかしくありません。
 また“会心の第二反駁”だったので、宇都宮女子高校さん側は、勝てたと思ったでしょう。
 ところが、ジャッジは肯定側のメリットと比較して、否定側のデメリットを大きいと受け取りました。

 そのギャップ、つまり上記3点目についての誤解を解くことが先かと思いました。

 肯定側:宇都宮女子高校さんのメリットは「患者が苦痛から解放されること」
 否定側:慶應義塾高校さんのデメリットは「望まない死」

 オーソドックスなメリットとデメリットに対して、肯定側第二反駁のまとめは下記の通りです。

 「デメリットは起こるかどうかが《あいまい》ですので、デメリットは《小さい》です。一方でプランを実施すると、患者は《確実》に苦痛から解放されます。死ぬことでしかその痛みから開放されません。よってメリットが起こるのは《確実》であり、必要なプランを実施するのは《重要》です。」

 文字にすると、ややパンチに欠ける“構造”であると、これをご覧の皆様は思うでしょう。
 ですが、宇都宮女子高校の二反の生徒さんは、コミュニケーション点も11点で、主張したいこともはっきりしていて、聞き手としては好印象でした!
 ですが、ジャッジはこの、パンチに欠ける部分を見逃さないのですよね(^^;

 宇都宮女子高校の先生と生徒さん達に

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 《あいまいな話》は《あいまいな話》に過ぎない。
 《あいまい》 → だから → 《小さい》 とは、ジャッジは判断しない

 あいまいであっても、皆さんが予期しない形で
  「実は大きい」とジャッジが解釈する可能性がある。

 実は今回、ジャッジは「メリットと比較すれば、大きい」と、3人とも解釈している。

… … …

 実は、メリットが小さいと判断されている。

 確実に起こるという議論が重要だと、必ずしも判断されない

 「安楽死をすれば確実に痛みから開放されるのかもしれない、が、『では、やってもいいのか?』という、“(そういう理由があるから)やることが重要だ”という説明が、ジャッジに伝わってない」(←立論の段階から重要性の説明が不足。痛みから逃れられれば、即「QOL」が向上するのか?という疑問が残ったと主審からの説明

「僕がナイフを使って殺せば、あなたは死ぬ。」→「では殺していいのか?」
#と考えれば、《確実》だから《良い&重要》とは言い切れませんね(^^;

#哲学的に言えば、因果関係があることと正義・道徳・善とは切り離されている
#という感じでしょうか。
#最近、「ハーバード大学 白熱教室」の再放送を見てから、こういったことに
#興味関心が高まっておりましてcoldsweats01

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 それに加えて、上記2点目に関係する話を加えました。

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 実は、デメリットがそれほど小さいとは思えないとジャッジが判断したのは、否定側立論に対する有効な反駁がなかったからではないか。

 立論というのは、大会に出るまでに皆さん、周到な準備をしている。
 主張が崩されないように、証拠資料が付いている。

 それに対して有効な反駁がなければ、まずは「否定側の言うことには一定の説得力がある」と、ひとまず解釈された(←もちろん、例外的に、証拠資料が付いている準備された立論であっても「それは違うのではないかな」と疑われる立論もありますが、慶應さんの立論は“オーソドックス”なので、積極的に疑うような理由を持ち合わせるはずがない、ちゃんとした立論でした(^^;)

 その段階で、肯定側に不利な展開に向かいますよね。

… … …

 もしもしれが、(上記1点目の)英語ディベートのフォーマットの影響で、立論への反駁が薄かったとするならば、少し残念(^^;

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 といった解説をしました。
 すると顧問の先生から、すかさず質問がありました。
「分かりました。では、メリットを大きく解釈してもらうには、どうしたら良かったのでしょう?

 発想が素晴らしいです!
 主張を一通り構築してから、その議論が「軽んじられては困るほど重要だ」という意味付けを加えることで、説得力が増すことを察して下さったのでしょう。

 前日が東北予選であったことも踏まえて、

「私の個人的な見解ですが、『安楽死によって救われる患者が生み出される』ということを、医療現場で実現させるには、医者などの個人の判断や努力では限界があり、むしろ個人に任せてはいけないので、《法制化という形で、国に動いてもらうしかない》としてはどうでしょうか?
 英語でも主語が大切ですよね。ディベート甲子園の論題にも「日本は」と、行為主体が主語として明記されています。ですから、行為主体の「日本がプランを行うこと」の意味をきちんと伝えてはどうでしょうか?」

と伝えました。(合っているかどうかは、現段階でもわかりませんm(__)m)

 そして「こういった、“ディベートにおいてジャッジに伝えるべきこと”は、日本語のディベートでも、英語のディベートでも、本質的に共通です。ですから、こういったコツを掴めれば、英語のディベートの方でも、日本語のディベートの大会でも、勝てるようになると思いますよ」という形でまとめました。

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 その後宇都宮女子高校の皆さんは、その後のいろいろな試合も見学しておられましたし、関東甲信越地区大会の奨励賞も受賞されておられました。

 そのような宇都宮女子高校の皆さんだったら、これからもディベートを続けてくれそうな気がしておりますhappy01

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 以上で、高校論題について振り返るシリーズは終わりです。
 続いてリクエストに応じて、中学論題についても幾つか振り返る予定です。

 …東北地区の、秋から冬にかけてのディベート企画について、動き出す必要もあります。
  個人的には、ディベートの教材の公開作業に着手しなくては、という焦りもありますdespair

 …高3の担任で、推薦入試のお世話、そして本業の物理の授業と講習などで忙しくなっております。
 あぁ、時間が足りない生活ですweep

 ゆっくりと更新を待っていただけば幸いですm(_ _)m>ALL

 ・・・束の間の、文化祭明けの休日でした!wink

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