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2008年6月29日 - 2008年7月5日の2件の記事

2008.07.02

【高校論題】派遣の現状を学ぶ!

 高校論題に取り組む皆さんは、派遣を司る役所をご存知ですか?
 論題発表から3ヶ月以上経っていますが、正直、私もつい先日まで知りませんでした。

 本校の部員が、派遣に関する新聞記事の切り抜きを持ってきてくれました。聞くと、部員の母親が、勤め先ににあったという、一週間ごとに発行される業界の新聞のもの、でした。(保護者がご子息の活動に理解を示して下さっている一例だと嬉しく思いました)
 高校論題に関して専門的なお話をどなたから伺えば良いのか、と悩んでいた私は「専門紙の記者の方なら詳しいのかな?」と思い、その新聞社の仙台支局に電話してみました。
 すると「派遣に関する記事は、官庁発表のものを記事にしている。派遣に関する仕事を一手に行っているのは、労働局なので、そちらに問い合わせてみては?」と教えて頂けました。

 なるほど、知りませんでした。
 派遣事業を許可するなど、労働者派遣法の執行に関する業務を司っているのは、厚生労働省の地方支分部局である労働局なのです。

 そこで早速、問い合わせをして、先日6月20日(金)、中学及び高校総体の代休日を利用して、高校生部員6名を連れて、お話を伺いに行きました。

 これが、とても良かったです!

 高校論題は難しい、という声を幾つか散見しますが、現場の実情を学ぶことによって、議論の質が高まるのではないかと思います。

 お話をして下さった方は公務員という身分なので、お話頂ける内容には限界があること(質問によっては答えて頂けないこともある)を予め了承していたのですが、それでも、派遣という労働形態を、労働派遣法をもって備えている訳で、そもそも法律は、労働者の権利を守るためにあるのですから、それを司る方々は責任をもってその職に当たられていることが良く分かりました

 その中で、下記のやりとりが、1教員としても考えさせられました。

担当者「自分の人生を決めるのは、誰だと思う?
部員 「自分です
担当者「その通りだね。話は逸れるけど、皆さんはそのための基礎を今、学校という場で学んでいるんだよ。勉強にも得意不得意があるよね。全部できれば素晴らしいのかもしれないけど、得意なことを伸ばしていれば、それが将来(何かの職に就いて働くこと)に繋がるんだ」

 現場の声にうなりました!
 派遣という労働形態は、得意な分野を生かす働き方、という側面もあります。(一方で、理想通りではない現場、もあります)
 多くの現場を見て、多くの労働者と接してこられている方の発言は、重みがありました

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 本校ディベート部は、論題に関連する現場を訪問することを度々行ってきました。毎回、学校という枠内では学べない、自分自身の視野を広げる経験になったと実感でき、これがディベート部の活動を行う意義のひとつだと思っています。

 この話題を書くと「そうか」と、各地でこぞって、労働局に問い合わせをする、というような現象が多発するような気がしますが、ちょっと一旦待って下さい。

 過去に「救急車の有料化」の論題の際に、各校が消防署に多数問い合わせをして、消防業務に支障があると苦情が寄せられた、という事例があります。
 これではディベートの普及に、大いにマイナスです!

 先方にアポイントを取るのは、大人の役目だと思います。
 まずは、大会に参加する際の引率責任者(顧問の方か、学校が認めた成人の方)にお願いして下さい

 私の場合は必ず、

  1. 先方に電話をして、東北学院中高ディベート部の顧問であることを明かし
  2. ディベートという、ある論題に対して肯定・否定に分かれて討論をするゲームに取り組んでいることを明かし
  3. 今回、全国大会に繋がる論題に関して、肯定・否定の双方に一理ある、その両面から調べ学習を進めるために、できましたらお話を伺いたいとお願いし
  4. 「生徒たちにあらかじめ質問事項をまとめさせ、事前にFAXでお送りします。できるだけ対応の時間が短くなるよう、負担が小さくなるように努めますので、お話を伺わせて下さい」という形でお願いします。

了承して頂けた場合には、FAXの番号とお引受け下さる方のお名前を聞いて、その方宛にFAXを送るようにします。
また、了承頂けない時には、今回のように、どこに問い合わせをしたら関係するお話を伺えるのか、の情報を教えてもらうようにしています。

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 今回の高校論題は、「日本で働くとはどういうことか?」という根本に関わる内容だ、と受け取っています。テレビで見たことですが、格差社会が関係するとなると、これは小泉構造改革以降の規制緩和の流れが関係しているかもしれないのですが、大臣になる前の竹中平蔵さんは「格差が生じることも止む無し。一部の裕福な人が全体を引っ張る」ことを良しと考えていた文章を発表していたそうです。

 その当時から時が流れて現在があるのですが、現在はどうでしょうか?

 そう考えると、「労働者派遣の是非」を超えて、日本はどうあるべきか、というレベルの更に大きな話題で…そりゃ高校生ディベーターのレベルでは決着なんか付けられないほど難しい話題になってしまいますが(^^ゞ…この点から考えると、確かに難しい論題ですよねcoldsweats01
 ・・・それでも、少しでも現場の現状を知り、学んでもらって、その上で、良いディベートを全国各地で展開してもらえたら、と思い、情報を発信する次第です。

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2008.06.30

関東と北海道の予選を見て

 先々週の15日(日)は関東大会の見学に、先週の22日(日)は、北海道大会でジャッジをさせて頂けました。
 全国大会に駒を進める学校の皆さん、関係者の方々、おめでとうございます。
 本校もそれに続くことができるように、更なる準備にスパートしたいと思っております。

 さて僭越ながら、次なる試合に向けて改善点を、と思った点を書いてみます。「でぃべーたぶる」をご覧になっている方々に感謝しつつ、参考になるならば有り難いです。

【1】解決性・発生過程について

a.プラン後の人たちも企業も“お人好しじゃないぞ!”

 中高生ディベーターに「思い込みがあるのかな?」という疑問を感じました。それは、関東の側に特に強く感じたのですが、北海道でもあります。

 高校論題で「プランを実施すると、現在の派遣社員は正社員になる」と、関東の多くの肯定側が考えているようでした。「仕事が残っているのに、派遣社員がいないのですから、企業側は正社員を雇うはず」という論理展開でした。一方で否定側も、特に反論もないことから、「双方で合意している?」と思ってディベートを聞いていました。

 これですが、企業の側に立つと、歴史的な流れの中で、企業側は正社員として雇うのを控えてきた…つまりは、正社員としては雇えない理由、そして、正社員じゃない形態の雇用をしたいと考えた理由があるはずです。

 仮に国が「派遣を禁止する」という政策を実施したとしても、日本の企業や働く人側の事情に変化が生じるとは考えにくいです。
 すると、企業側は、派遣が雇えないという制限がある中でも、企業のメリットが最大限生じるような雇用等を進める、と考えるのが普通かと思われます。

 高校論題でいえば、プランで確実なのは「派遣という形態での労働者を雇えない&派遣という形態では働けない」ということ、中学論題では「中学生以下が携帯電話を使えなくなる」ということだけのはずです。

 ですから肯定側としてはプラン後、何が変わって、何が変わらないかを踏まえた上で、「プランをするとこうなります」ということを、解決性・発生過程という形で説明した方がいいと思います。

 一方で否定側も、高校論題でいえば、派遣という労働形態がなくなるだけで、企業は軒並み倒産したり、派遣で働いていた人の生活が軒並み困窮に至るとも考えにくいのです。なぜなら、企業だって黙って倒産に至ることを受け入れるわけもなく、派遣労働者も働くこと・生きることを諦めるわけもなく…。
 プラン後の人たちも企業も“お人好しじゃない”と思うのです。
 ただ黙ってデメリットをこうむるわけはなく、プラン後の世界でも、労働者個人なりに、企業なりに、幸せや(企業理念に近づく)利益を求めて、…少しは考えて行動するはずです。

 「ひどい状況に至らざるを得ない」理由があればそれを説明して欲しい…というか、それが否定側の役目だと思うのですが、「必ずしも全体が発生過程通りに酷くなるとは限らないんじゃない?」と思う立論が幾つかあって、気になりました。(オンラインディベートでも、そのようなジャッジをさせて頂いた試合があります。関東大会の席では駿台甲府さんと、それを踏まえて、議論させて頂けました。交流に感謝(^^))

 当然中学論題でも、小中学生の手元から携帯電話がなくなるだけで、他に変化はなく、更には高校生以上の多くの人の手元には携帯電話が残るわけで…。

 今後の宿題にしてみて下さいcoldsweats01

b.プラン後の“ゴール”って?

 一方で解決性・発生過程の“ない”立論を、たまに見かけました。
 現状分析を分厚く述べることで、論題に示された政策が行われれば、自ずと問題が解決しますよねぇ&新たな問題が生じるに決まってますよねぇ…と、ジャッジに投げかけられたような立論です。恐らく、ディベーターはそれを意図していないのでしょうけど。

 プランを実施しても、必ずしも全体がその通りに動く保証がないので説明が必要だ、ということをa.で述べましたが、この解決性・発生過程の“ない”立論を聞くと、「皆さんはプランで、対象(日本だったり、企業、労働者、中学生以下で携帯を使っている人)をどうしたいの?」ということが全く伝わらない、と思いました

 「いったい日本をどうしたい?」という“ゴール”が分からないのです。

 “ゴール”が分からないと、「プラン後は実際にはどうなることを想定しているのか?」が分からず、いくら重要性・深刻性を述べていても「そりゃ、そうなるよねぇ、そうだよねぇ」と言えるものがないのですから、その通りの評価をして良いのかどうかの判断基準が分からず、メリット・デメリットを評価できない、という状態に陥ります。

 その部分の立証責任は、立論を述べたチーム側にあると思います。
 立証責任を果たしていないと判断された立論は、ディベート甲子園ルール細則Dの2項1号により、相手から反論がなくとも、そもそものメリット・デメリットを小さく評価される場合があることが、審判講習会テキストの11ページからも分かります。

 今回は、高校論題でも中学論題でも、解決性/発生過程がポイントになると思いました。

【2】論題充当性について

 主として高校論題なのですが、関東ではプランに「企業側には、現在の派遣労働者を正規に雇用するよう義務付けます」といったプランが入っているケースがありました。
 それに対し、否定側から、そのプランが論題充当性を満たしていない、という反駁があったものの、完全に「肯定側のプランが論題を充当していない」と証明されたと判断されずにプランが残った試合がありました。また私は見ていなかったのですが、プランは論題を充当していないと判断されて、肯定側のメリットがないと評価された試合もあったそうです。(残念ながらメリットは、論題の範疇にないプランからのみ発生していたのでしょう)

 論題充当性については、東北支部でも5月の交流大会の時に問題視されました。それに対して、東北支部主催の入門セミナーで、講師の市野さんから「渡辺徹さんの『論題充当性』に関するトライアングルの記事を読むのが解決の道!」と伺っていましたので、こちらを読んでいました。
 この記事は、これから高校論題での試合がある方々には是非に目を通しておいて頂きたいと思います。
 また、日を改めて、論題充当性については、こちら『でぃべーたぶる』にも書く予定でおります。

 一方で北海道の大会では、高校生の試合で“プランがない”試合がありました。
 恐らく、あまりディベートに慣れていない学校さんだったと思うのですが、対戦相手もジャッジも、好意に解釈をして試合が成立してはいました。
 もちろん、ガイドラインの3に「高等学校論題については、肯定側が立論でプランを示してください。」とありますので、プランを示してほしいのですが(^_^;)、こういった事例からも『論題を充当させるとは?』という観点からディベートを考えるきっかけにしてもらえたら、と思います。

■追伸
 関東でも北海道でも、「でぃべーたーぶる」を読んでくださっている中高生ディベーターに会えました。嬉しい限りです(^^) 「見てます」とディベーターの方から言って頂けると、励みになります。ありがとうございました。m(__)m

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