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2007.10.13

語彙→表現→伝える→説得する

 12日(金)、久々に部員のディベートを見ました。
 論題は、北海道・東北【共通論題】の「高校生以下の携帯電話の禁止」です。
 モデルディベートを、14日(日)に行われる『宮城ディベート“楽しみ隊”』にてやらせる予定なのです。

 立論は、Debateフィードバック掲示板に投稿して下さった立論(現在肯定側が削除されていますが)を使い、反駁を考えさせて試合をさせる、という感じでした。

 試合中に電話が来て、否定側第一反駁を見れなかった、ということもありましたが…

 残念ながら、大きな指摘をせざるをえない試合でした。

 一番最初に、中学1年のある部員に聞いた質問です。
 「今回のディベート、楽しかったかい?」

 「いいえ」

 「・・・」

 ・・・そうなのです。聞いていてもわくわくしないディベートでした。

 全てのディベートが楽しくあるべき、とは思いませんが、そもそもディベートに取り組む本旨からズレているのを感じました。

 ディベートという競技は、ジャッジや聴衆に対して訴えたことが伝わり、かつ、説得に成功した時が、ディベーターとしての喜びを感じる瞬間です!

 すると、そもそも、「ジャッジに何を伝えたいの?」ということが明確になっていなければ、その喜びを得るための根本がありませんから、何度やっても「ディベートが楽しい」と思えるはずがありません!
 これは不幸
です!

 次に、「何かを伝えたい」と思っても、それを伝える言葉が思い浮かばず、スピーチができなければ、最終的な「ジャッジ及び聴衆の説得」には至りません
 『言語化』は、ディベートにおける教育目的の主要な1つです。
 …伝えるための語彙を増やすには、ディベートの試合をたくさん見学して、ジャッジの反応・コメントをたくさん見て、そして、自らもディベートの経験をたくさん積むことが必要です。

 次に表現です。
 「どのような言葉を使って表現すれば、ジャッジは納得するのだろうか?」ということが大切です。

 今回の試合で肯定側は、否定側の立論に対して「インパクトの独り歩き」という表現を用いました。何を伝えたいのかは分かりましたが、これではジャッジは頷きにくいでしょう。リンケージに多少の疑問があるのかもしれませんが、「でもインパクトはあるのね?」と思ってしまいます。
 ですが、実は肯定側の彼等が言いたかったのは、○→●の差分がない、ということなのです。そもそも携帯を持ち歩いていなければ、地震に遭っても、連絡が取れない。つまりプランの前後で変化がない…。
 一言で言えば「固有性がない」ということです。ディベートの用語を用いれば、僅か数秒でディベートに長けたジャッジを納得させることができます
 しかし残念ながら、聴衆は分かりにくい。そこで、補足説明的に、「固有性がない、つまり、例えば携帯を日々持ち歩いていない人は~~」として、より確かなイメージを持ってもらうスピーチをする必要があります

 次に、言葉が思い浮かんでスピーチしたとしても、伝わっていなければ、話になりません!
 ただ原稿を読む…それでは、実際にジャッジや聴衆に伝わっているのかどうか、ディベーター自身は確認できません

 ジャッジや聴衆が聞いているか、少なくとも顔を上げて前を見て、伝えたい相手を意識する必要があります。

 最後に「説得する」です。
 説得できれば、勝てるのです
 さて、説得できているのでしょうか?
 ジャッジのしぐさや、聴衆が聞く姿勢を保っているのか、ディベーターは確認できているのでしょうか?

 昨年からの部員には言いました。
 「ちゃんと伝わったディベートの最高の例を見たよね。去年のディベート甲子園の決勝を、あの肯定2反のあとの会場からの拍手を。きちんと伝わるディベートができていれば、ああいう試合になるのだ、という良い事例だったじゃないか」

#お世辞でもいいから、試合後は拍手しておけ、とは思いません!
#不必要な拍手は謹みましょう。
#あの時の拍手は、大会の最期の試合、というシチュエーションで、聴衆が「理解した!」という、自発的な反応の拍手だと思いました。

 ディベートって、非常に教育的で、素晴らしい競技です。

 コミュニケーションの訓練…ディベートの特徴です。
 人は、相手に何かを伝え、その伝えたいことが相手に伝わった、という時に、非常に喜びを感じるものだと思います。

 僕自身、授業や教育の場で、適切な言葉で適切に相手に伝えられる教員になるべく、もっとディベートの経験を積んで、語彙を増やし、判断力を磨きたいと思っています

 そして、部員達がよりおもしろく、より素晴らしい議論を展開してもらえるように、どのように努力すべきなのかを考え始めたところです。

 ディベート、道は険しく、先は長い、と、改めて自覚します。

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コメント

須田です。お久しぶりです。
先日、都内の某中学校にコーチに行った時にも話したのですが、ディベートの楽しさについて少々触れたいと思います。

結論は、ディベートの楽しさを感じるのは非常に難しいです。特にディベートを始めて少ししてからがあまり楽しくない期間です。始めたてのころは、意見を自由に言える場に対して楽しむことが出来ます。しかし、ある程度してくるとジャッジに伝わらないもどかしさ、リサーチの大変さ、飽き等様々な理由でディベートが楽しくなくなってきます。中途退部者が多いのもこれらの理由があると思います。

では、楽しくなるにはどうしたらいいのでしょうか。それは、恐らく練習するしかないと思います。ジャッジに伝える技術も、練習をしなければ身につくはずがありません。試合で突然やれといわれて出来る人はほんのわずかでしょう。少なくとも、僕にはそんなこと出来ません。

リサーチも、リサーチをすることはよほどのことが無いと楽しいとは思えないでしょう。僕自身リサーチは殆どが苦しいと感じることが多かったです。しかし、自分の探していた資料にめぐり合えたとき、試合で苦労して見つけた資料が決め手になったときの喜びは、非常に大きなものです。

スピーチにしても、リサーチにしても始めは苦しいだけで終わってしまいます。これを耐えることで、ようやくディベートの楽しさが分かってきます。僕は今年の全国大会までは、勝つこと優勝することにしか楽しさを感じることが出来ませんでした。しかし、今年の全国大会ではスピーチ自体を楽しむことが出来ました。この段階で初めて、ディベートを楽しむことが出来たように思えます。


ディベートを楽しむには、高い壁を乗り越えなければなりません、しかし、それを乗り越えたときにはディベートを本当に楽しむことが出来ます。

ディベートを楽しさを感じられない期間は、言葉が悪いですが別のもので気をひくといいでしょう。
1:良い試合を見せる。(去年の全国の決勝など)
2:法学部に行きたい人を洗脳する。(ディベートには、法教育の実践として大きな効果があるので)
3:推薦などで使える。(大会の成績や、スピーチの訓練としてディベートは役に立つ)

邪道ではありますが、このようなもので気を引きつつ生徒のディベートに取り組むインセンティブを保ちながら、練習をさせることで、本来の目的である「ディベートを楽しむ」といったことにいたると思います。

これからは僕も一指導者として頑張っていきたいと思います。

投稿: 須田@早大学院 | 2007.10.14 13:33

名越先生、twです。ご無沙汰してます。
ディベートの楽しさ・・・か。ぼくにはまり縁のない言葉です。ディベートの楽しさを知る人たち(例えば、F木氏、裕也、上の方など)はこぞってディベートの楽しみ方をみんなに伝えようとします。去年のF津君のスピーチや大学推薦のネタなどはたしかに楽しいように聞こえます。しかし、それは極端な話、高みにまで登った玄人にしか分からないのでは無いでしょうか?F木氏のスピーチが町を歩いている一般の方に分かってもらい、そこからディベートの楽しさまで感情が及ぶでしょうか?話が分かっただけでは「楽しむ」にはつながりません。極論ですが、高みに登った人の話はこれからディベートを始めるビギナー、ディベートをやり続けている中級者には分からないのでは無いでしょうか?仮に分かったとしても、そのうまいスピーカーとのギャップを感じてしまい挫折することは無いでしょうか?
挫折から立ち直ることは大切です。事実、ぼくもいくぶん立ち直りました。完全ではないですが。されど、すべてのディベーターが挫折から立ち直れるわけではありません。立ち直れなかったディベーターの姿ほど辛いものはありません。現に、僕は三年間でディベートを楽しんだ人たちに埋もれて、苦しみ抜いた人たちを知っています。代弁者ぶるつもりはありませんが、僕も彼らの一人です。勝負の世界は厳しいものだ、といえばそれまでですが、このままディベートが玄人指向になるのを見ることはできません。そうならないように願いたいものです。先生の話を読んでそう思いました。
根拠が無く、ただディベートのポジティブな部分だけをディベーターに宣伝し、ネガティブなところを隠すのはディベート嫌いにさせる一歩だと考えます。

けど、すべてのディベーターをディベートが好きにさせるって無理でしょうね・・・・・。好きになれたやつはラッキーなことかもしれません・・・・・。

追伸:近く、伺いますので楽しみに。長文失礼しました。

投稿: tw | 2007.10.26 15:05

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