以前、岩手県立盛岡第三高等学校の総合的な学習(略して“総学”)で行うディベートに関して協力していることを書きましたが、実は様々な助言は続けさせて頂いていて、困難を乗り越えつつ進行しております。
特に、ディベートを授業やホームルーム等で導入したことのない私にとっては、現場の声を率直にお聞かせ頂けていること自体がものすごく貴重な経験となっています。
また、NADEのディベートに、ある程度長く主体的に関わっていると、そういった困難を乗り越えるためのノウハウが幾つも思いつくのです。
#OBOGの皆さんにも、そのノウハウがあるはずですので、地域でのディベートの取り組み
#に困っている方がいらっしゃったら、ご協力・ご助言のほど、よろしくお願いします。
その中で、2つのアイディアが生まれました。
1:定義とプランが提示された論題の提供
~~《佐々木先生宛のメールより》~~
>今日生徒の方から、
>
>「『夫婦別姓』って具体的に何を指すのか定義がはっきりしないと議論にならない
>んですけど、配布された資料(ディベートアゴラのモデル立論です)の定義をその
>まま使っていいですか?」
>
>「少年犯罪の実名報道については、具体的に何歳からこんな条件で、って区切っ
>てもいいんですか?でないと話が広がりすぎて収拾つかなくなりそうで」
>
>お~君たちはなんてかしこいんだ!
(中略)
> ガイダンスのときから、できるだけ専門用語を省いて説明してきたので、立論
>シートも定義とかプランとか、書く欄をきちんと設けていなかったのですね。
(中略)
> やはり「定義」とか「プラン」とか、教えることを面倒がらずに、きちんと形式に
>のっとってすすめるべきでした・・・。
これは僕も勉強になりました。
議論をかみ合わせるためには、前提条件を共通にしておく必要があって、それが「定義」及び「プラン」なのですよね。
大学生以上のディベートですと、「定義はそれでいいのか」という点もディベート上で争われるのですが、中学生以下だと、最低限の定義とプランを付帯文で定義してあげておいた方が親切だ、と言われています。
高校生ですと、例えば夫婦別姓にも様々な形式があって、今回のディベートでは~~を認める、と考えることも学習でしょうから。
そうすると、定義やプランを決めるのが、議論を始める前に必要なんだよ、という指導が必要なのだなと。
… … (別なメール) … …
> 論題と決めるときに、今回は中学生のように定義とプランをこちらで提示すること
>にしよう・・・と思って立論シートに記入欄を設けず、あえて説明もしなかったのです。
なるほど。他校にディベートの論題を薦める際には、少なくとも定義に関する解説を付しておく必要があるのですね(^^)。
#例えば、「積極的安楽死」と「消極的安楽死」「尊厳死」との違いや
#夫婦別姓のあり方、など、教員側も知っておいた方がいいですよね。
~~~~(引用終了)~~~~~~
ディベート甲子園要に『論題解説』があるように、これから総合的な学習でディベートを取り入れようというする学校宛に、更に簡潔かつ必要な内容の書かれた解説があれば、先生方も生徒も、よりスムーズにディベートに取り組めるのかな、と思いました。
2:リサーチの期間に、短いフォーマットでのテストマッチの実施
これは担当の佐々木先生が「(準備に充てる時間が終わりそうなのに)生徒の準備がパッとしなくて(T_T)」という嘆きのメールに対してのアイディアでした。
~~《佐々木先生宛のメールより》~~
試しに来週、練習試合をしてみたらどうでしょうか?
一番できていそうな2チームを、立論シートのままやってごらん、とするのです。
時間が余る=間が持たない時の恐怖、というのは、体感しないと分かりませんよね。(まるで準備をしていない授業をするような感じなのですが(^_^;))
そして、間が持たないチームのディベートが、説得力を持つはずがなく、ジャッジはそれを目の当たりにすることになるのです。
判定シートに「改善してほしい点~弱い議論と感じた点・反駁で小さくなった議論」の欄があります。
(大会ではないので)ジャッジは結構気楽にクラスメイトの議論を聞いて、「やっぱりそれじゃあ弱いねぇ」と、そのシートに書いていくのです。
そうすると「実はうちらも、ああなるの間違いない!やべくね?」となって、手を加えていく訳です。
宮城野高校でも、一番最初にやったチームが「もう一度やりたい」と言っていたと聞くのですが、それは「最初はコツがわからないから負けたんだよぉ!」という心の叫びの裏返しかもしれませんね。
ということで、わざと良さげなチームを各クラスでピックアップして、さらにわざと短いフォーマットで練習試合をさせて、「このままでは本番は大変だ!」「でも、お試し試合でよかったね~」というようなことで、生徒の現状を自覚させる、というのがいいかもしれませんよ。
… … (別なメール) … …
実際に試合をしてみると、準備不足のチームは恐らくショックを受けると思うのです。試合の勝ち負け、というよりも、ジャッジの多くから“評価されない”ということですから。一方で、多くの人に伝わった、という勝った側の喜びは、今後に生かされることでしょう。
ということで、ミニディベートで練習試合をしてみて下さい。
肯定側立論:2分
(準備:1分)
否定側質疑:2分
否定側立論:2分
(準備:1分)
肯定側質疑:2分
準備:1分
否定側第一反駁:2分
準備:1分
肯定側第一反駁:2分
準備:1分
否定側第二反駁:2分
準備:1分
肯定側第二反駁:2分
合計20分
(立論の交換がなされていない場合には、質疑の前に準備時間を入れて22分)
*話す内容がなくても、時間が残っていたら、計時し続けます。
空白も、経験と勉強のうちです(^_^;)
必ず、勝敗判定をさせて下さい。
例の勝敗判定の紙に、良かった点、悪かった点を書かせて、練習試合をした生徒たちに「君たちのディベートは、聞き手にこのように伝わったらしいよ」として、「ディベートは肯定・否定の双方に一理ある論題が設定されてます。来週までに改善点を改善すれば、負けたチームも勝てるかもよ。勝ったチームも、聞き手に更に伝わるディベートを目指そう」、また「ジャッジの皆さんも『明日は我が身』で、自分たちがディベートするときには、聞き手に何を伝えたらいいのか、良く考えてね」としてみてはどうでしょうか。
このミニディベートで練習させる、というのは、宮城野高校の時にはない、ナイスアイディアだと思っております。その効果が実際にはどうなのか、是非お聞かせ下さい。
… … (別なメール) … …
>ついいましがた、バロッドシートを提出しにきた生徒から
>『すっごい面白かった!!13対12で白熱しました!』
>といわれ、ちょっとほっとしました(^o^)
>
>テスト前なんだから自習でいいじゃん、という生徒も文句もあったのですが、強行突破
>してよかったです。
~~~~(引用終了)~~~~~~
これは、我ながらナイスアイディアだったと思います。
そして、この実践で、盛岡第三高校の先生方及び皆さんは、ディベートの教育実践において大切なことに気づいて下さるのです。
~~《佐々木先生宛のメールより》~~
> ディベート=「話す能力」を培う・・・というイメージが一般的にはありますよね?
> 「言い負かすゲーム」という誤解も。
>
> でも昨日の試合を見た先生方は、ディベートを通して「人の話を聞く力」が不足して
> いることを感じた・・と言っていました。
> 話を聞いて、それに応えて意見を返す・・・これってすごい訓練ですよね。
佐々木先生ほか、盛岡三高の先生方がこの点に気づかれたのでしたら、とても素晴らしいです!
全くその通りで、ディベートで大切なのは「聞く力」です。
しかも「あとで話すため」という目的を与えて、“スイッチ”を入れた状態で相手の話を聞くことになるのです。惰性で聞くのとは違う「聞く訓練」になります。
また、自分の意見を述べるためにも、相手の話を聞き、それを理解するからこそ、自分の意見が出るのであって、それで初めて「表現」に繋がります。これはディベートでも、小論文でも、面談・面接の応答でも一緒です。
また「人の話を聞いて理解する」という能力は、普段の授業の場面でも、絶対に必要な能力なのですから、その資質を伸ばすことは重要で、他の先生方からも賛同を得られるはずなのです。(授業中に「話を聞け!」と叱るだけでは、話を聞く資質を伸ばせないはずなのです(^_^;))
~~~~(引用終了)~~~~~~
終わっていない段階なのですが、僕はとっても嬉しいです!
最終的に良い学びとして終わることを、とても期待し、最後までサポートしたいと思います!
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